日本は、世界的に見て従業員エンゲージメントが最低レベルと言われていますが、
一時、外資系企業にお世話になっていた為か、その理由が良くわかるので考察してみました。
注:一般的な内容を記載しております。当社や、特定の企業、特定の人物のことを記述したものではありません。
また、この記事を記述するにあたり、以下の記事を参考にさせて頂きました。
参考
日本は139カ国中132位と最下位レベル
ちょっと古いですが、2017年に公表された、調査会社ギャラップ社が実施したエンゲージメント調査では、
日本企業では「熱意あふれる社員」の割合が6%で、139カ国中132位と最低ランクの順位とのこと。
勿論、国や労働環境や、そもそもの労働に対する考え方、企業の文化も異なるので、単純な国際比較が意味あるのか?という
側面は否めませんが、本記事では、日本企業のエンゲージメントが、
なして、ここまで低くなっているのか?ということについて考察します。
※ちなみに、同調査では、エンゲージメントが高まると、
生産性が17%、営業成績が20%、利益率が21%上昇する。
逆に、欠勤によって発生するコストは42%、離職率が59%下がるとか。
ワーク・エンゲージメントの定義
まず、ワーク・エンゲージメントの定義ですが、複数あったので、以下に掲載させて頂きます。
ウィルマー・B・シャウフェリ(Wilmar B.Schaufeli)の定義
オランダ・ユトレヒト大学の教授で組織心理学者。2004年に以下を定義
「ワーク・エンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。そのエンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」と定義している。
ウイリアム・カーン(William Kahn)の定義
組織行動論研究者で、1990年、ワークエンゲージメントを概念化した人。その概念は以下。
「エンゲージメントすると、人は肉体的、認知的、感情的に専心するとともに役割の中で自己表現する」仕事上の役割に対し肉体的、認知的、感情的に没頭している状況をエンゲージメントとした。
日本エンゲージメント協会のワーク・エンゲージメント定義
「仕事を自分事と感じ、楽しみ、組織に貢献しようとする自発的な姿勢・行動」
(一般社団法人日本エンゲージメント協会HPから転記)
エンゲージメント調査の12の質問
ギャラップ社が実施したエンゲージメント調査の12の質問(1~5段階で評価)
- 職場で自分が何を期待されているのかを知っている
- 仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
- 職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
- この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
- 上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ
- 職場の誰かが自分の成長を促してくれる
- 職場で自分の意見が尊重されているようだ
- 会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
- 職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
- 職場に親友がいる
- この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
- この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった
(働く人の幸福度をはかるたった12の質問から転記)
※ギャラップ社によると、特に業績に直結するのは1~6とのこと。
エンゲージメントの低い理由
あちこちの記事を読みあさって、世間一般で言われるエンゲージメントの低い理由と記述されているものを纏めました。
・時間と賃金のリンク
時間の制限があり、決められた時間労働しないと減給になる。と言うもの。
・オーバー・コンプライアンス
何か起こるたびに新しいルールが作られ、手続きが複雑になり、
監視・減点主義・叱責といったネガティブイメージを従業員に与え、
失敗を恐れずにチャレンジすることができない文化が形成される。と言うもの。
・複雑な組織形態
部署や役職者の多さがコミュニケーションを複雑にし、
従業員はあまり意味を感じない仕事に時間を奪われストレスになる。と言うもの。
・職能型
専門職よりゼネラリストが重視され、個人の伸ばしたいスキル、成長したい方向性、専門分野がある社員には、
成長できない組織と映る。と言うもの。
・人事評価制度
MBO(目標管理制度)の導入により、セクショナリズム(組織内での割拠主義)の発生、
相対評価によるチームワークの低下などの問題が発生する。と言うもの。
・同調圧力
発言すると組織内で浮いてしまうと感じたり、否定される可能性があると感じて発言しない。
また、発言を制限されていたりする場合や、事実にもとづく合理的な判断以外(同調圧力など)で物事が決定されている。と
社員が感じた場合、問題意識の高いロジカルな社員はストレスに感じる。と言うもの。
考察
これは日本人の国民性や、日本企業特有の問題なのか?という疑問が浮かび、
海外進出している日系企業の海外でのエンゲージメントについて調べたところ、以下の記事を見つけました。
シンガポールでもタイでも、日系企業で働く人々のエンゲージメントが最も低いことがわかった。
つまり国民性などと関係なく、日本企業は他の国でも従業員エンゲージメントを引き下げてしまっている可能性がある。
つまり、日本式の会社運営の仕方がマズいということ。。
高エンゲージメントは、結果、利益率が上がって離職率も下がる訳ですから、取り組まない企業は無いと思いますが、
ただ、その前に、新卒だろうが、中途だろうが、入社当初は皆、労働意欲があり、エンゲージメントが高かったと思われるのに
(一部、悪意で入社する人も居る?かも知れませんが、多数は、頑張ろう!と思って入社すると思います。)
暫くすると何故、こうもエンゲージメントが低下するか?を考察します。
・仕事が認められない
仕事ぶりをいつも目にかけてくれている先輩に「今回、頑張ったな」と言われた際、めっちゃ認められた気がしました。
逆に何も見ていない人に「頑張ったね」と言われても、悪い気はしませんが、何も響かない。と言うか、
年に数回、会話が有るか無いか?の人に何を言われても…と、お前が言うな位にしか思いません。
叱責も同様で、先輩からの叱責は、真摯に受け止め様としますが、
普段、何も見ていない人に叱責されても何も響きません。
問題が起きた時だけ、今までの努力が無かったかの様に叱責や譴責は最悪です。
つまり、部下が、自身の仕事が見られていない。と感じている場合や、
対話ではなく情報が一方通行の場合、エンゲージメントが下がると思われます。
・やりたいことが出来ない
上述の専門職にもありますが、ゼネラリストが重視され、やりたいことが出来ない場合、
この組織に所属する意味あるのかな?とか思い始めます。
例えば、弁護士になりたい!と思った場合、
ロースクールに通ったり、実務を知るために弁護士事務所でアルバイトしたり、資格取得に向けて勉強するなど、
目標に向かって必要なスキルを得ようと努力しますが、全然違う事を求めたれると、成長できない組織に見え
結果、エンゲージメントが下がります。
・高すぎる目標
バブル以降、日本の企業の約8割が、MBO(目標管理制度)を導入したと言われていますが、
社員目線では、目標を設定して達成すれば良いですが、未達成の場合、降級、減給、叱責などが想定されます。
となると当然社員は、目標を達成できる様にするため、目標設定を下げます。
これにより、社員は目標を下げる理由を探し始めます。場合によっては上司がムリヤリ高い目標に設定します。
結果的に仕事自体がつまらなくなりエンゲージメントを下げます。
・将来像が描けない
この会社でマネージャーになりたい!自分はマネージャーになったら、自分のセクションをこうしたい!など、
将来像が描けない状態が続くと、只々漠然と目前の仕事だけをこなすようになります。
また、以前、Z世代の方から「むしろマネージャーになりたくない。だって、〇〇さんみたくなるんでしょ?」と
言われたことがあります。
努力した所で、どれだけのリベートや評価が得られるか分からず、徐々にエンゲージメントが下がると思われます。
・相談できない
上司との対話がなかったり、話を聞かないスタンスだったり、決めつけて話したりすると、
社員は「何を言ってもムダだ」と思うようになり、結果、上司も部下も、各々が各々を気にしなくなります。
結果、上司への信頼、会社への信頼がなくなり、エンゲージメントが低下すると思われます。
また、上司に限らず、そもそも企業内に相談する相手がいない場合も同様になります。
・給料が上がらない
優秀な社員は自分の目標を達成します。それも、ものの見事に。
何だったら、会社が目標設定を促さずとも、自身で既に目標を持っていたりもします。
ただ、組織なので自分だけ目標を達成しても、組織全体の利益が減っていたら給料は上がりません。
一生懸命やっても、ズルしている他の社員も、結局、給料の評価が同じなのでエンゲージメントが下がります。
そして、努力は報われない。と悟り平凡な社員になるか、他社へ転職します。
どっちにしろ、会社的には、優秀な社員を放出します。
じゃあ、エンゲージメントを上げるには?
以下は、試していないので、結果は未知ですが、考えたことを記述します。
1.ビジョンの共有
何をすれば昇進するのか?評価されるのか?給料が上がるのか?を誰が見ても分かるようにする。
一般社員から社長までのロードマップを提示します。
2.見える化
各等級の達成/未達成の基準を明確に数値化し、社長含め全員をその評価対象者とします。
個人的には、全社員の給与を社内で公開しても良いと思います。
(昔に比べ公開する企業もだいぶ増えました)
3.対話する・教育する
プロジェクトを進めると必ずと言っていい程、コミュニケーションとマネジメントの問題にブチ当たりますが、
これと同じことが社内で起きているので、何を言うのか、何を言わないのか、
コミュニケーションのスキル、マネジメントスキルが問われます。
よって、事前に対話する人の教育が必要になります。
また、量が質を作ることもある為、対話する量を増やす。などの施策も必要になります。
4.落書きを消す
だいぶ昔ですが、米ニューヨーク市長が取り組んだ事業で、重犯罪を減らすため、地下鉄の落書きを一掃した。という
有名な話があります。
当初は、落書きを消した所で犯罪は無くならない。税金の無駄使いだ!というバッシングが多かったと聴きますが、
結果的には、重大犯罪・凶悪犯罪が激減しました。
これは、小さな犯罪を徹底的に排除していくことで、ニューヨークではどんなに小さな犯罪であれ容赦なく罰せられる。と
メッセージを送り、それが安全な街作りに直結したことに他ならないと思います。
つまり、上述の様な「姿勢」を見せる事。信賞必罰であることが必要だと思われます。
毎日遅刻する人が居て、誰も注意しなかったら、その内、他の人も毎日遅刻する様になります。
最後に
今回、調査したことで「顧客を意識する」という事がとても重要だと思いました。
仕事をする上で、顧客を意識する。って、何、当たり前のこと言ってんの?とか思われそうですが、
エンゲージメントが低くなる理由として挙げられる以下の項目は、(当然ですが)どれもベクトルが内向きです。
・時間と賃金のリンク
・オーバー・コンプライアンス
・複雑な組織形態
・職能型
・人事評価制度
・同調圧力
つまり、本来、社外に費やさなければいけないエネルギーを、
それと同等か、それ以上のエネルギーで社内に費やす必要がある組織では、
社員のエンゲージメントが下がると感じました。
また、抽象的な表現が一切ない、明確なジョブ・ディスクリプションに沿って仕事をする。とかも有りかな?とか思いました。
社員の満足は、顧客の満足に。顧客の満足は、会社の満足に。会社の満足は、社員の満足に。
とか言う標語みたいなものが有りますが、逆に言うと、
社員、顧客、会社のどれかが不満足になると、連鎖することになります。
自分がコントロールする権限を与えられた組織は、メンバーが「不満足」にならないように気を付けよう。と思いました。
でわ